久しぶりに投稿いたします。
理学療法士の可部です。
「忙しい」を言い訳にして、ブログの更新が中々できませんでした。
今日は、前回の認知症ケアについての続きをお話させていただきます。
まず、前回紹介した認知症の原因となる代表的な疾患4つ「アルツハイマー型認知症」、「レビー小体型認知症」、「脳血管性認知症」、「前頭側頭型認知症」について、特徴を簡単に紹介いたします。
「アルツハイマー型認知症」について
大脳皮質の神経細胞にアミロイドβという異常なタンパク質(老人斑)が沈着し、脳の萎縮をもたらすことで起こると言われています。
アルツハイマー病の進行は、若いほど速く、高齢になるほど遅く進行していくという特徴があります。
また、アルツハイマー型認知症は、主に脳の前頭葉から側頭葉、頭頂葉にかけて、脳の萎縮が見られます。特に、記憶や学習を司る海馬や側頭葉から、萎縮することが多いのもアルツハイマー型認知症の特徴の1つです。
そのため、アルツハイマー型認知症では、初期症状として「記憶障害」がよく現れます。
「レビー小体型認知症」について
大脳皮質や脳幹の神経細胞にレビー小体という特殊なタンパク質が蓄積することで起こる。レビー小体型認知症の特徴は、記憶障害を含む認知機能障害や社会活動の障害に加え、幻覚のうち主に幻視の体験、パーキンソン症状が出現することです。
「脳血管性認知症」について
脳出血、脳梗塞などの脳の血管疾患が原因となります。しかし、脳血管疾患になった人すべてが認知症になるわけではありません。また、脳血管性認知症は、脳血管疾患の再発を繰り返すたびに病状が階段状に低下するという経過をたどります。
特徴として、脳の障害部位によって、症状に多様性が生じます。
「前頭側頭型認知症」について
脳の萎縮が生じる場合や頭部外傷によって脳の前方部分を障害された場合に起こる。特徴としては、同じ言葉や手を打ち鳴らすなどの単純な行為を何度も繰り返し行ったり、同じ店に何回も出かけるといった常同行動、万引きや隣の人の食べ物を取って食べるなどの反社会的な行動、抑制がなくなった行動、味覚の好みが変わったり食事量が増えるといった食行動の異常などの行動面の症状が挙げられます。
次に、認知症ケアを行う上で基本となる4原則について、お話します。
認知症ケアの4原則
認知症ケアの4原則として、①共にある、➁安定した関係、③行動の了解、④タイプ別ケアがあります。
①共にある
認知症の方が、どのような気持ちで今過ごしているのか、その心のうちを知ろうという思いを持ち、ケアにあたる者として希望を捨てることなく、焦る気持ちを抑え、整え、温かく、静かに「共にある」ことが大切です。
これにより、ケアする者とされる者が「苦痛共同体」となることが関係性の構築に大切です。
②安定した関係
その人にとって人や物が変わったり、周辺の環境が変わることのないようにすることが、安定した関係をつくるのに大切です。つまり、認知症の方は状況の認知力が落ちているため、まわりの環境の変化に理解力が追い付かず、周辺症状の悪化につながります。
周辺の環境を「なじみの環境」にしていくことが大切です。
③行動の了解
認知症の人の行動を「了解」することですが、わかりやすくいえば、相手の異常な行動を自分に置きかえて納得することです。もし私がこの人で、今このような状況に置かれていれば私もこの人と同じ行動をとったかもしれない、と考えることです。
例えば、自分が今どこにいるのか分からない状況だとしたら、「家に帰らなければ、ここから出なければ」など考えると思います。そういった場合に、歩き回って状況を打破しようとする行動が徘徊などと考えれば、理解しやすいかと思います。
④タイプ別ケア
認知症は、6つのタイプに分けることができます。以下に、6つのタイプと症状やケア方法について、簡単に紹介いたします。
1.認知障害型
症状:人・物・場所・時間などがわからない。
ケア方法:複雑な状況や環境とならない工夫をしてあげる。
例えば、トイレの場所がわからず失禁してしまう場合、トイレの位置がわかりやすくなる工夫(トイレだと分かるように大きな文字で掲示する、トイレだと分かりやすいマークを掲示するなど)を行います。認知症の方によって工夫の仕方は様々です。
2.環境不適応型
症状:新しい環境や状況に対する拒否。
ケア方法:ケアをする担当者を同一の者とし、なじみの関係を築いていく。
3.身体不調型
症状:嫌なことや気の進まないことがあると興奮する。
ケア方法:どんな身体の不調が見られているかで、ケア方法が変わってきます。
脱水が原因であれば、1日1500ml以上の水分摂取(水分ケア)。
便秘が原因であれば、生理的な排便の獲得(排泄ケア)。
低体力が原因であれば、1日1500kcalの食事摂取(食事ケア)と歩行を取り入れた日中の活動量up(運動ケア)。
4.葛藤型
症状:突然興奮する(暴力、人・物集め、異食)
ケア方法:抑制されたと感じられないような声掛け・対応を行う。
例えば、立ち上がりに介助が必要にも関わらず、一人で行ってしまう方に対して、「危ないから一人で立ってはいけないですよ」ではなく、「立つときには、お手伝いさせてもらうので声を掛けてください」などと声掛けを行う。
5.遊離型
症状:無為・無動(一日中ボーっとしている)
ケア方法:習慣的に行っていた役割などを行ってもらう。散歩など外出機会を作る。
6.回帰型
症状:自ら古き良き時代へ回帰する。
ケア方法:古き良き時代への回帰に合わせた対応をする。
以上、簡単にではありますが、認知症ケアについてお話させていただきました。
以前に紹介した基本ケア4つ(水分、食事、排泄、運動)は、認知症のタイプに関係なく重要なケアとなります。認知症の方には、基本ケア+認知症ケアを実践することが大切です。
寒くなってきましたので、皆さん体調を崩されないように気を付けてお過ごし下さい。
最後まで、ご覧いただきありがとうございました。